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「WOO」の概要


「WOO」とは、円谷プロがフジテレビ向けに企画した特撮テレビ映画である。昭和37年春ごろ、フジテレビから当時まだ会社組織ではなかった円谷特技研究所に打診があり、企画がスタートした。企画の中心になったのは、円谷特技研究所の金城哲夫と熊谷健、フジテレビ映画部に所属していた円谷英二の次男・皐だった。フジテレビに提出された「WOO」の企画書によると、物語は故郷を失った宇宙生物・WOOが、アンドロメダ星雲から宇宙を漂流して地球に漂着。ヌード・カメラマンの秋田譲二に助けられ、ともに不可解な事件を解決してゆくというものであった。設定では、WOOはゲル状の不定形生物で、通常は「眼」しか見えていないキャラクターとされている。この番組は「円谷空想科学映画劇場」というシリーズとされていて、30分、オールフィルムで合計39本(3クール)の制作で1クールごとに主人公が変わる設定になっていた。企画書によると第1クールの主人公がWOO、第2クールではラッパー、第3クールではスペースホースと1クールごと別の主人公が設定されている。

この企画「WOO」は、昭和40年(1965年)、TBSで制作された「ウルトラQ」の後番組の企画に転用され、「ウルトラマン」へと発展した。

平成18年(2006年)には、NHKの制作で日本初のハイビジョン特撮ドラマ「生物彗星WoO」として実際に制作された。

企画書

「ウルトラQ伝説/アスペクト刊」によると「WOO」の一番古い企画書は、昭和38年(1963年)春ごろにフジテレビに提出されたものだとされている。

「ウルトラマン大鑑/朝日ソノラマ刊」によると「WOO」の最終企画書は、B5判で80ページにわたる大冊だとされている。その中には、13編のサンプルストーリーが掲載されていた。

「ファンコレNo.2/朝日ソノラマ刊」によると「WOO」の企画に携わったのは、西村五州(フジテレビ映画部長)、円谷皐、今津三良、金城哲夫とされている。

「ウルトラマン大鑑/朝日ソノラマ刊」には、この企画書の全文が掲載されている。

【サンプルストーリーのタイトル一覧】
作品No.タイトル
第1話 WOO来訪す
第2話 うごめく湖底
第3話 大地震
第4話 爆破狂
第5話 凍結アメーバ
第6話 WOOの初恋
第7話 WOO大いに怒る!
第8話 魔線
第9話 華麗なる殺人予告
第10話 海底基地を砕け
第11話 緑の恐怖
第12話 WOO大いに困る
第13話 WOOの涙

脚本

「ファンコレNo.2/朝日ソノラマ刊」や「ウルトラQ伝説/アスペクト刊」などによると「WOO」の脚本は、円谷英二、金城哲夫、熊谷健、そして、大伴昌司の仲介で集まった日本SF作家クラブの半村良、光瀬龍、星新一、福島正実、平井和正、石川喬司、豊田有恒らによって制作されたとされている。

「ファンコレNo.2/朝日ソノラマ刊」などによると月に一度、築地の料亭・田村に円谷英二、金城哲夫、熊谷健と日本SF作家クラブのメンバーが集まり、脚本を練ったと紹介されている。

「ウルトラマン創世記/小学館刊」によると「WOO」の企画に携わったのは、作家の星新一や小松左京、画家の小松崎茂とされている。

「ウルトラマン大鑑/朝日ソノラマ刊」には、第5話「WOOと爆発狂」の脚本の全文が掲載されている。

【現存する「WOO」の脚本一覧】
作品No.タイトル原案脚本
第1話 宇宙人来訪す 円谷英二 金城哲夫
第2話 富士五湖騒動 金城哲夫 金城哲夫
第3話 大噴火(大地震改題)   山浦弘靖
第4話 凍結アメーバ 光瀬 龍 村田武雄、山浦弘靖、梶田興治
第5話 WOOと爆発狂   大伴昌司
第6話 WOOの初恋    
第7話 WOO大いに怒る!    
第8話 魔線 金城哲夫 山浦弘靖

※各作品の監督、特技監督のクレジットは、すべて監督/梶田興治、特技監督/川上景司

日本SF作家クラブの概要

日本SF作家クラブは、昭和38年(1963年)3月5日、新宿の台湾料理屋山珍居において、11人のSF作家・評論家・編集者により、発足した。発足時のメンバーは、以下の通り。

石川喬司(評論家・サンデー毎日編集部)
小松左京(作家)
川村哲郎(翻訳家)
斎藤守弘(科学評論家)
斎藤伯好(翻訳家)
半村良 (作家)
福島正実(SFM編集部)
星新一 (作家)
森優  (SFM編集部)
光瀬龍 (作家)
矢野徹 (翻訳家・作家)

※参考資料 福島正実「未踏の時代」

キャスト

「WOO」の企画書によると主要人物として、ヌードカメラマンの秋田譲二、その助手の団太郎、そして、彼らを取り巻くモデルたちが紹介されており、毎回グラマーなモデルが出演する設定になっていた。その中で実際に発表されたキャストは、番組のヒロイン(ドロシー役)となる予定だった浮須良美(うきす・よしみ)という女優だけである。彼女は、朝鮮戦争で死んだ米兵を父に持つ17才のハーフで、ファッションモデル出身の女優だった。

「ウルトラマン創世記/小学館刊」によると「WOO」のキャストで決まっていたのは、主役の秋田譲二役の佐原健二だけだったと紹介されている。

「週刊新潮 37/昭和39年(1964年)9月14日号/新潮社」に浮須良美のモノクログラフ(5P)が掲載されている。

劇伴音楽

「ウルトラオリジナルBGMシリーズ1 ウルトラQ・ウルトラマン 宮内國郎の世界/キングレコード」に掲載された宮内國郎のインタビューによると「WOO」の劇伴音楽は、円谷皐の依頼によって自分(宮内國郎)があたる予定だったと述べている。

「ウルトラQ伝説/アスペクト刊」によると「WOO」の劇伴音楽は、伊福部昭が候補にあがっていたと紹介されている。

「ウルトラQ LDメモリアルボックス」の解説書によると「WOO」では、伊福部昭の音楽テープを使用する予定があったとされている。

契約の破談

「ファンコレNo.2/朝日ソノラマ刊」によると昭和39年(1964年)4月、「WOO」はフジテレビとの契約調印の日に破談となってしまったとされている。調印の場に同席していたフジテレビの西村五州は、円谷皐に破談となった理由を「契約上のトラブル」としか伝えなかったとされている。

本サイトの読者の方の情報によると円谷皐のインタビュー録音テープが存在しており、その中で契約が破談になった理由を契約書の「甲」「乙」の表記が、フジテレビが「甲」、東宝が「乙」になっていたことに東宝側が激怒したためだったと語っているそうである。

「ウルトラQ伝説/アスペクト刊」によると、「WOO」の制作中止が決定したのは、当時の新聞記事などから推測して昭和39年(1964年)4月以降と考えられるとされている。

「ファンコレNo.2/朝日ソノラマ刊」によると、「WOO」の制作中止は、昭和39年(1964年)4月以降と解釈できる内容が紹介されている。

フジテレビが円谷特技研究所に特撮テレビ映画の制作を打診したのは昭和37年の夏ごろだったと伝えられている。円谷英二は当時フジテレビの映画部に所属していた次男・皐から特撮テレビ映画の制作を持ちかけられ即座に企画に取りかかったと言われているが、ストーリーの骨子が固まったのは、「WOO」の最初の企画書に制作が「フジテレビ、円谷特技研究所」となっていることなどから昭和38年4月までのことだと考えられる。

また、「WOO」の脚本は、日本SF作家クラブの協力を得て制作されたが、日本SF作家クラブが発足したのが、昭和38年(1963年)3月5日であることから築地の料亭・田村での毎月の企画会議は、昭和38年4月以降のことだったのではないだろうか。

「ウルトラQ」の企画は、昭和38年(1963年)6月ごろにスタートし、昭和39年(1964年)9月の制作決定までの約1年3ヶ月だった。しかし、「WOO」は企画開始から契約破談までの期間が、約1年8ヶ月以上と考えられ、ひとつの番組の準備期間としては、異例の長さであることがわかる。

小松崎茂による「WOO」のイメージボードは、「WOO」の設定と脚本が出来上がりつつあった昭和38年(1963年)春以降だったのではないかと考えられる。

「WOO」の契約の破談の理由について、具体的な情報は残されていないが、一般的に語られている「契約金額の折り合いがつかなかった」という理由は、信憑性に乏しい。制作にあたって、特撮テレビ映画の制作が日本ではじめてのことだったとしても事前に見積りの提示はしていたはずであり、契約の判を押すその場になってもめる要因ではないと考えられる。TBSとのオプチカルプリンタの一件が理由と考えられないことはないが、円谷皐が、同人誌のインタビューで述べている「契約書の甲乙」の扱いによる理由というのが、一番信憑性が高いかもしれない。

「WOO」の制作中止が確定した時期について、当時の新聞記事から想定すると昭和39年(1964年)秋以降だったと考えられる。

TBS版「WOO」

昭和40年(1965年)晩秋、TBSは、「ウルトラQ」の放映開始を直前に控えて、新たな企画を依頼した。その時、最初に提出された企画が、フジテレビで企画された「WOO」にトップ屋集団A.G.C(アート・グラフィック・センター)という組織を加えたTBS版の「WOO」だった。この企画は、採用されなかったが、この企画が発展して「ウルトラマン」が誕生したと言われている。この時の資料として「設定とストーリー WOO」という企画書が現存している。

「ウルトラマン大鑑/朝日ソノラマ刊」には、この企画書の全文が掲載されている。

「ウルトラマン大鑑/朝日ソノラマ刊」には、TBS版「WOO」のサンプルストーリー「凍結アメーバー」の脚本の全文が掲載されている。

【サンプルストーリーのタイトル一覧】
作品No.タイトル
第1話 WOO現わる
第2話 メタトロンM
第4話 宇宙胞子
第5話 宇宙モンスター
第6話 海底基地を砕け
第7話 吸血貝
第8話 WOOとWOO
第9話 原始怪獣
第10話 地球最後の日
第11話 ミサイルを追え
第12話 火星のバラ
第13話 宇宙ステイションの危機

2015-1-8更新
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